世界のあちこちを旅していて、今まで食べたものの中で一番美味しかったものは何
ですか?たまに聞かれる質問だ。真っ先に思い出すのはアラスカの原野でエスキモー
の猟師からもらったベルーガ(白鯨)の肉の事を真っ先に思い出す。
98年の初夏、シーカヤックでベーリング海沿岸をシーカヤックで旅を続けてい
た。流氷の間を漕いだり、グリズリー(灰色熊)や鯨と遭遇したりしながら旅を続け
ていた。そしてロシアとの国境近くの海岸で野営をしていたときだった。海からライ
フルを担いだ4人の男達がやってきた。最初はどきっとしたがセイウチの猟にやって
きたそうだ。そして打ち解けていくうちに彼らから空き缶に入った鯨肉をもらったの
だ。
まずは脂肪と赤みの肉が半々の生肉に岩塩をかけて食らいつく。「うげ〜〜う
めぇ〜〜!!」思わず叫ぶ。脂肪と肉が何ともいえない旨さをかもしだしている。
ビールが欲しくなったが一番近いリカーショップまで海を200km漕いで帰らなく
てならない。ガスの抜けきったコーラで流し込む。
目の前にはベーリング海の水平線が広がり、後ろにはアラスカの原野がつづいてい
る。しかもエスキモーが仕留めた鯨肉だ、旨くないはずがない。
次は茹でた肉だ。これもまた柔らかくて食べやすい。よけいな味付けはなしで、た
だ塩のみ。この素朴さが最高だ。最後に薫製も食ったがあまりに生と茹でた肉が旨
かったので、それほど感動はなかった。
鯨肉は子供の頃、凍らせた生肉を薄くスライスしてニンニク醤油でたべたことは
あったが、このロケーションで食べるとひと味もふた味も違う。要は何を食べたかも
大事だが、どこで誰と食べたかが大事だろう。
その点、あまり顔を見たくもない上司とか同僚と食う会席料理はとてもまずい。料
理としては旨いに決っている。だが旨く感じないのだ。
彼女と数日間山を歩いた後、下山し、歩いた山を眺めながら食べるカップラーメン
とビールは最高に旨い。やはり何処で誰と食べるかが大切なのだ。

エスキモーからもらったサーモン

エスキモーが冬を乗り越えるための魚を捕っていた。

キャンプサイトの沖を鯨が通り過ぎてゆく。