北極圏のラーメン定食
アラスカ・ベーリング海をシーカヤックで旅をしていた。相棒は2001年にグリーンランドの海で遭難した故河野兵市くん。
アンカレッジで購入した膨大な食料を無理やりカヤックのハッチに入れ込み漕ぎ進む。カヤックの重量は80kgを超えていた。
食事はパンケーキや乾燥肉など様々な食材を買い込んでいたのだが作るのは決まってラーメンだった。
まずはご飯を炊く。そしてタマネギとキャベツで野菜炒め。そしてインスタントラーメンだ。
そのラーメンは価格の高い日本製ではなく、安い3minute noodleだ。
それらを並べるとベーリング定食の出来上がりだ。翌日の夜は途中まで同じように作り、それを一つの鍋に盛ってベーリング丼となる。
旅の途中でエスキモーの家族からサーモンをもらい、それを焚き火にくべて焼いた日もあったが、その日もやはりベーリング定食だった。
いつかテレビでグリーンランドを横断したイタリアの冒険家が毎日、毎回スパゲティを食べているのを面白おかしく放送されていたのを思い出す。
我々も毎日同じ麺食い同士、毎回ラーメンなのだ。
もちろん行動中はレーズンやナッツ、シリアルをレーションケース(行動食入れ)に入れて、それをボリボリ食べていた。
アンカレッジのスーパーマーケットでは色々なインスタントラーメンが売られている。韓国製や中国製。そしてタイ製だ。
もちろん日本製のMARUCYANなどがあるが値段が高い。ついつい安いタイ製を買ってしまう。
ゴールドラッシュのころの廃墟跡を探索中に古釘を踏み抜いたり、強風で廃墟の壁に隠れて過ごしたりなど様々なことを乗り越えてついにロシアとの国境の集落に着いた。
人口150名ほどで、端から端まで歩いて10分も続かない集落を探索してみる。そして1件だけある売店に行ってみた。
10畳ほどの店の中には様々な商品が置いてある。
食材はもとより工具や資材。釣り道具の横にはライフルと弾丸。そして鯨漁用の炸裂弾タイプの銛など日本では考えられない陳列のバラエティーさだ。
その中にKIKOUMANの醤油がある。つい嬉しくなる。日本人だなぁ。そしてMARUCYANのラーメンを見つけたのだ。
河野くんと顔を見合わせ「買おうぜ!」とくそ高いインスタントラーメンを買い込んだ。
荷物の中には3minute noodleがまだたくさん余っているのだがそれはそれなのだ。
その日の宿にしていたロッジに帰りMARUCYANを作って食べた。
北極圏で食べた日本製のインスタントラーメンの味は自分の中にある日本人の血を感じるには十分だった。
高いと言っても80¢(当時のレートで¥100ほど)で楽しめる自分がなんか幸せだと思う。

故河野兵市くん。私の冒険の師匠だ。

ロシアとの国境の集落Walesに着く。

セイウチの牙が置いてあった。

鯨の骨が祭られるように立ててある。

これだけの食材を積み込んで旅をしたのだ。