混浴露天風呂

 

 二十歳のころ屋久島登山に行った。フェリーを降り、早速山を目指して歩き出す。車を使い林道の途中から出発すれば頂上まで近い。だが時間はあっても金がない私は海から山頂まで歩き、そして海まで下る0m登山を目指す。

 当時は縄文杉にも触れたし、ウイルソン株の中にも入ることができた。登山者が少ない時代だ。途中で道に迷いながらも登頂した宮之浦岳からの展望は忘れない。その後、花の江河などを経て案房にたどり着いたのは5日後だった。

 屋久島と言えば平内海中温泉だ。毎日2回干潮時にだけ入れる海沿いにある露天風呂。5日間の山行でぼろ雑巾のようになった体を洗うため向かった。

 たどり着いた温泉は昼間のせいだろうか誰もいない。早速真っ裸になり湯に浸かる。ものすごく気持ちがいい。登頂の達成感と雄大な海の景観にどっぷり浸る。

 しばらくしたら3人の若い女性がやってきた。「こんにちは」挨拶をかわすとためらいもなく私の入る湯船に入ってきたのだ。3人のうち一人は当時容認されていた水着。もう一人は裸でバスタオルを巻いている。そして最後の一人はTシャツを着ているのだが下半身は何もつけていない。

3人は私の存在など気にせず楽しそうに入っている。だがまだ多少純情だった私はたまらない。肩まで湯に浸かりじっとしていた。いや動きたくても動けない状況なのだ。一人が私のすぐ目の前の湯船に腰掛けた。いやでも目線を逸らすしかない。私はますます動けない状態になる。

 だがさすがにのぼせてきたので湯船から飛び出す。そして着替えを置いていた岩陰で着替えて走り去った。どうやら私は彼女らにからかわれていたようだ。

後で友人たちに話すと「なんていい経験をしたんだ。うらやましい」と言われる。今そんな状況になったらいいななんて思うときがあるが、おそらくその時もあたふたするだろう。

 その後も何回も平内海中温泉には行くが、その後はなにもない。あの日の事は白昼夢だったのだろうか。


平内海中温泉。
あのときのことは白昼夢だったのだろうか。

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